来月(9月)からスタートする箕面市の中学校給食で、食材(野菜)総重量の16%(約1.3トン)を“箕面産”野菜でまかなう見通しがつきました。地産地消率16%?・・・「なんだ、その程度?」って思う人も多いかもしれません。
でも、昨年同月の小学校給食をみてみると、実は箕面産0%、大阪産でも0.5%というのが実態。
・・・これまで箕面市教育委員会は、小学校給食で「地産地消を原則として、豊能地区、大阪府、近畿の優先順位で給食食材を調達しています」と標榜してきたにもかかわらず、です。
それもそのはず。当たり前ですが、学校給食は「全校」「毎日」です。つまり、必要な食材の量というのはすさまじく膨大。例えば、中学校6校の給食に使う野菜の総重量は1ヶ月だけで8トン以上、Mサイズのジャガイモ(1個100グラム)だけで換算すると80000個以上にあたります。・・・もっと密度の低そうなレタスとかで換算したら、いったいトラック何台分になるのか想像もつきません。
この圧倒的な必要量に対して、農業王国でもなんでもない大都市「大阪」が生産して市場に流通させている野菜の量はかなり極小です。もちろん、田畑が残っているとはいえ住宅都市「箕面」の小ささは言うまでもなく・・・。だから、できるだけ近隣から調達することを意識しても、箕面産0%、大阪産0.5%のレベルにとどまっていました。(参考:箕面市学校給食の産地公表)
この数字からすると、来月の中学校給食で、大阪産でなく“箕面産”だけで地産地消率16%達成というのは「もう驚異的というほかない」というのが僕の率直な感想です。これを実現させたのは、今年4月に発足したばかりの「箕面市農業公社」と、それはもうハリキッテ全面協力してくれた箕面の農業者の皆さんです。本当に感謝。
・・・さて、ここで核となる役割を担った「箕面市農業公社」とはなにか?住宅都市である箕面にとって「緑」は強力なシンボルです。
北側に連なる山並みはもちろんですが、市内各所に残る田園風景もその大きな要素。大阪都心部からこれだけ至近にもかかわらず、豊かな田園風景に囲まれた穏やかな住環境は、なにものにも代えがたい箕面の都市イメージの源泉です。
だから、多くの箕面市民は「田園風景を守ってほしい」と言います。
でも、箕面のような都市近郊の農業は、土地も小規模で、まとまった生産量があるわけでもなく、地権者の方々にしてみれば田畑を維持する苦労は生半可なものではありません。しかも、箕面市の農業者の多くは“兼業農家”で、普段は別の仕事をお持ちの方ばかり。
「それでも代々受け継いできた土地を守りたい。」・・・箕面の田畑の多くは、そんな地権者の“気概”だけで維持されているといっても過言ではありません。人件費などまかなえるわけもない現実のなか、仕事の隙間やたまの休日を使っての農作業も、その気概だけに支えられてる現実があります。
そして、どんなに気概があっても、個々の事情がそれを許さないこともあります。息子の世代は「農作業なんてムリ」というケースだって多いです。そうやって、少しずつ確実に田畑が消滅していきます。「田園風景を守れ」と口で言うのは簡単です。でも、農業者に献身を求めるだけでは解決も持続もしません。
では、本当に田園風景を守り続けるにはどうしたらいいのか?・・・僕は、農業者のボランタリーに依存することから少しでも脱却して、ちゃんと農業を“業”として成立させることをめざすしかないと考えました。
「農業を“業”として成立させる」とはどういうことか。
それは、とてもシンプルなこと。「田畑で生産されたものが、ちゃんとお金に換わる」ということです。
つまり、誰かが野菜を買って食べるしかありません。
ここで着目したのが、ちょうど開始しようとしていた「中学校給食」だったのでした。
前述のとおり給食が必要とする食材量は膨大・莫大です。この調達の原資として、保護者から「給食費」をお預かりしていますが、これまではすべて食品流通業者に支払っていました。このほんの一部だけでも(食品流通業者を介さず)箕面産野菜の買取に振り向けられればいい。
それと、地元の農業支援だからって、わざわざ高く買う必要はない。なぜなら、食品流通業者を介さなければ、中間マージン(流通コスト)が減るので、結果として市場と同じ調達価格でも農業への還元率はあがるから。つまり、市場と同じ対価で、同じ量が調達できればいいのです。・・・これが発想の原点です。
中学校給食と地元農家をつなぐ。
この役割を担う存在として構想し、今年4月に発足させたのが「箕面市農業公社」だったのでした。箕面市農業公社の役割は、中学校給食のスタートにあわせて独自の流通経路を構築し、田畑を安定稼動させること。その仕事は、具体的には2種類に大別されます。
1つめの仕事は、近所の農家さんたちの生産物を一手に引き受けて学校につなぐ受発注業務。
市場に流通させられる美しく整った野菜は、実際の生産量の一部です。これまで、曲がったキュウリは市場に出すこともできず、農家で自家消費されるしか道はありませんでした。
でも、大量調理の給食ならちゃんと受けとめることができます。曲がってても、目の前の畑で作られた安心感と美味しさには、対価を払う十分な価値があるはずです。
そして、もう1つの仕事は、農家から耕し手のいない遊休農地を借り受けて、自ら耕してしまうこと。もちろん、ここで生産された野菜たちも学校給食の供給源となります。
発足して間もない箕面市農業公社ですが、8月までの4ヶ月で箕面市内の遊休農地(約3.5ヘクタール)の約3割(約1.1ヘクタール)を借り受けて、農地としての再生をスタートしています。一部では、すでに中学校給食に提供する野菜も栽培しており、今後さらに給食への“箕面産”野菜の提供が拡大します。
チャレンジはまだまだ始まったばかり。きっと、うまくいくことばかりじゃないとは思います。でも、スタートは上々。
この仕組みがうまくまわっていけば、保護者からお預かりする給食費が、ダイレクトに近所の田畑を守り育てていくことになります。子どもたちの目の前には、学校の帰り道におっちゃんが耕してるようなリアルな近所で育った野菜が、校内の給食室で調理されて並びます。たくさんの人が紡いだ連鎖の果てに、毎日、自分たちの口に食べ物が入る。子どもたちは、きっと何かを感じ、何かを学んでくれると思います。
農業者の方々にとっては、作ったら作っただけちゃんと買い取りの対象になるという安定メリットがあります。でも、そのメリット以上に、「すぐそこの学校の子どもたちが食べるなら!」とハリキッテくれた農業者の皆さんの“心意気”がなかったら、半年足らずで地産地消率16%というミラクルはありえませんでした。重ね重ね感謝です。・・・そして、都市部ながらも目に優しい豊かな田園風景が維持されること。これは箕面市にとって大きな大きなプラスです。
それと最後にもう一つ。・・・この“農業×給食プロジェクト”は、「先に献立を作って必要な食材を発注する」のではなく、「来月に生産される食材から献立を構築する」という、献立づくりの発想を大逆転してくれた学校の栄養士さんたちの知恵と努力抜きには語ることができません。これからもよろしくお願いします。
そんな裏方の努力もクロスしながら、箕面市の“農業×給食プロジェクト”は試行錯誤を続けます。
詳しくは、ビジュアルな写真でオススメの農業委員会事務局のブログをどうぞ!
これからも箕面市農業公社と農業者の皆さんへの応援よろしくお願いします!
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2013年08月22日
16%って多い?少ない?〜箕面の“農業×給食プロジェクト”の挑戦
posted by 倉田哲郎 at 20:53
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大阪府箕面市で地方自治を全力でドライブ。
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