今回の市議会には、箕面市役所の公務員制度改革(給与条例などの改正)を提出しており、委員会が採決延期になったり、修正案を提出したり、いろいろ紆余曲折はありましたが、最終的には可決いただきカタチにすることができました。
これは、僕の市長2期目の公約の3本柱(北急延伸、教育改革、公務員制度改革・・・全部イニシャルKなので“3K”と揶揄されてましたけど)の一つでもあり、個人的にも非常にコダワったものでした。(というわけで、今日はどうしても長文です。)

一般論ですが、僕は、多くの公務員は実直で真面目だと思ってます。
公務員。ときに融通がきかなかったり、世間常識とズレたりすることもありますが、その原因はルール(法令・内規)への実直さだったりすることも多く、個人の問題というより、時代にあわないルールの見直しができてない行政組織の問題だったりもします。無愛想で、上から目線で、口のきき方を知らないって感じることもありますが、実は本人に悪気がなく、組織的にそうしたトレーニングをせず育ってきたことにも原因があったりします。
・・・あ、それでいいって言いたいわけじゃないですよ。柔軟さに欠け、常識とズレてて、社会人として失礼だっていうのは、プロとして非常に情けないことで、全然ダメです。ただ、その多くが組織の課題に起因することであって、“個々人”の特性としては「いやホント、公務員って実直で真面目な人が多いなぁ(というのが僕の印象だ)」と言いたいだけです。(組織の問題は承知してますので、それはそれで職員ともども改善がんばります。)
ところが、あくまで一部にですが、悪い公務員たちってのも現実にいます。
よくあるのは、積極的に(意図的に)サボって楽しようとするタイプ。なかには、自分だけサボってると目立つので、頑張ってる同僚の足を引っ張り、後輩には「あんまり頑張るな」と言って、全体の能率を落とそうとするなんて悪質なタイプもいます。あと、ごく稀にですが、本当に悪いことしてる人(社会規範に反してる人)もいることでしょう。
率直に、僕はこういう悪い公務員が許せない。そして、こういう人たちでも生涯給料が上がり続け、クビにならない身分保障にアグラをかいて、安穏と一生過ごすことができる現状を呪いたい。
そして、そんな人たちを横目で見て育ち、いつしか自分もアホらしくなって、努力することをやめてしまった後輩たち。本来は有望なポテンシャルをもっていたはずの人材が、易きに流れて負のスパイラルに陥っていく社会的損失も放置できません。
一方で、そんな人たちを横目で見ながらも、歯を食いしばって努力し続け、自分の時間を投げ打ってでも市役所を支え続けている人たちもいます。その涙ぐましい努力には、なんとかして応えたい。
公務員の“平等”な世界とは、なんと不合理なものか、と思います。
今回の箕面市の公務員制度改革のスタートは、市長1期目の終わり頃、ある飲み会で若手職員が僕にグチった「市長、おかしくないっすか。」「アホらしくなりますよね。」という言葉からでした。ご承知のとおり僕も元・公務員、だからこそ実感として悪しき公務員たちを憎むし、正直者がバカをみる現状を強く呪うし、彼らのグチに激しく同感でした。
そこで“変えてやる”と心に決め、市長2期目の公約に掲げ、2年かけて具現化してきたのが、今回の市議会で成立した公務員制度改革だったのでした。
内容は、簡単に言えば「年功序列の打破」です。もう言い古された言葉。
多くの人は「なーんだ、そんなことか。」と思われるでしょう。そうなんです、たったそれだけのことなんです。
多くの行政関係者も「なーんだ、そんなことか。うちだってもうやってるよ。」って言うでしょう。・・・でも、あなたたちは違います。“もうやってるよ”ってのはたぶん誤解です。
たぶん「うちもやってる」という行政関係者の人たちは、「うちには上司・部下で年齢が逆転してるケース(年下の上司、年上の部下)がある」というのを思い浮かべたはず。箕面市にだって昔からよくあります。
それは一見、年功序列が打破されてるように見えますし、管理職手当も多少は上積みされていることでしょう。でもそこからは、実は「給与本体が“完全年功序列”であること」が見落とされています。僕は、この「給与本体の“完全年功序列”」こそ、古くから温存されてきた公務員の給与制度の本質であり、サボり続けても給料が上がり続ける元凶だと思っています。
年齢差による給与本体の差額が、管理職手当の差額を大きく上回り、上司・部下の実際の給与が逆転しているケースが多々あります。なにせ公務員の給料表は、昇進しても同額(または直近)にスライドするだけで、給与本体が上がるようにはできていない(=役職が違っても同期は同じ給料)のですから。
ときどき「公務員は、給料のために仕事してるんじゃない」なんて言われます。元・公務員の僕としても、それはまあ間違っちゃいないなと思います。給料のアップダウンに一喜一憂する人は少ないし、給料があがったからって頑張るわけじゃない。・・・だから給料に差をつけても意味がないって言う人もいます。
でも、ある日、突然アホらしくなることってあるんです。「あんな人でもこんなに貰ってるのかぁ」とか思っちゃった瞬間、「なんか頑張ってもあんま変わらないのね」とか感じてしまった瞬間、努力が認められない完全平等(?)なシステムなんだと知ってしまったとき。アホらしくなって、これまでのモチベーションを維持できなくなることってあります。
そうやって、多くの公務員が心を折り、くじけて、やる気のない職員に変貌する。それはとても残念なことだし、低いモチベーションのまま仕事をやっつけるだけになった公務員は、社会的損失を超えて、ときに害悪にすらなりえます。
だから、今回、「年齢と処遇」を一致させるのを本当にやめました。
「責任と処遇」を一致させ、「努力と処遇」を一致させる。
そう、簡単に言えば「年功序列の打破」。たったそれだけのことなのです。
それを形にしたのが今回の給与条例改正の最大のポイント。職員たちとともに、独自に模索して到達した一つの答えで、こんなマニアック(だけど大事)な給与表の見直し案は耳にしたことがないので、たぶん、全国に例のない(ものすごく地味に)画期的な制度改正になってると思います。
こんな公務員制度改革を提案すると、「競争至上主義だ!」とか「成果主義は企業でだって破綻してるんだ!」とか、いろいろ言われます。
・・・というか、実際、審議のなかで一部の市議会議員からは
「理不尽極まりない」
「職場の連帯感を歪める」
「市役所は給与に差をつけて頑張りを促すところではない」
「給与減額が広範に及ぶ」
「上位評価をとらなければ昇給もできないような本当にきつい内容」
「職員に冷や水を浴びせる」
などなど言いたい放題されました。
でも、正直、僕はそんなドラスティックな世界を求めたわけではありません。
もちろん、いろんな企業や組織が、いろんな人事給与制度をもっています。年功を重視する組織もあるでしょうし、競争に重きをおく組織もあるでしょう。ただ、そのなかで、従来の公務員制度の「年功への偏りぶり」「悪平等さ」がナンボなんでも極端すぎてるだけです。そして、今回の新制度は、その偏りを是正しただけです。
できあがった制度は無茶苦茶なプランではまったくありません。普通に頑張ってちゃんと仕事をすれば、多くの職員は経験年数とともに相応の責任を背負っていき、責任相応に報いられていく、そんな常識的・良識的な制度に仕上がっています。
ただし、ずっとサボってる人の給料は絶対に上がらないようになってますし、多くの職員が認める人材は、早めに責任を背負い、ちゃんと報われていくようになっているだけです。
ゼロからたたき台を作ってくれた若手職員チーム、最後まで苦しみながら制度化の作業や組合交渉にあたってくれた担当職員たち、大モメにモメたものの最終的には理性的に合意に至ってくれた職員組合、そして、危ぶみながらも影に日なたに支援いただき、最終的には「これこそ必要なことだ」と認めてくださった市議会議員の皆さん、本当にありがとうございました。
制度は成立しましたが、運用に魂をこめていくのはこれからの仕事。
毎年1億円以上にのぼる人件費削減の効果もさることながら、それよりも中長期にわたり、市役所の職員がモチベーションを維持し、納得しながら市民のために仕事に励む、新制度がそんな“礎”になっていくことを願っています。
それと、(箕面市の出した答えが唯一の正解とは思いませんが)全国の実直な公務員の皆さんのためにも、箕面市の挑戦が、他の自治体でも公務員制度の根本を見つめなおすキッカケになるといいなと思ってます。
【追伸】主に政治にかかわる方へ
役所の給与制度の運用が、ホントのところどうなってるかなんて、極めてマニアックな話なので、多くの首長や議員さんたちは、なんとなくしかイメージできてないのが実状と思います。
かくいう僕も例外ではなく、もともとは「なんとなくおかしい」「だけどどこがおかしいのかわからない」というのが正直なところで、今回の議論で掘り下げていって初めて理解できたこと、仕組みがわかったことなどいっぱいありました。
もし疑問に思ったら、資料をご参照いただき、まず職員に「上司・部下で給料が逆転してるケースは一切ないんですか?」と聞いてみてください。そこからすべては始まります。