市長に就任させていただき初めての予算編成。2〜3月の市議会でご審議いただく予定です。
昨年末に、“改革特命チーム・ゼロ”が公表した「緊急プラン(素案)」の“ゼロ試案”や、パブリック・コメント(意見募集)で寄せていただいたたくさんのご意見を拝見しつつ、悩みながらの予算編成で作業が例年よりかなり遅れましたが、なんとかここまでこぎつけました。
詳細は、こちらの概要をまとめている報道資料や予算概要、施政方針をご覧いただければ・・・とは思いますが、資料もかなりの量ですので、全体像と感想をここで少し。それでもちょっと長くなりますが・・・。
(※ 予算案のポイントを一番コンパクトにまとめた資料は“コレ(要点)”と“コレ(概要)”の2枚(A3版)です。)
目指したのは、“財政バランス(収支バランス)の復元”(=子どもたちの世代にツケをまわさないこと)と、それでも単なる削減・緊縮に陥らない“メリとハリのついた予算案”(=重点化する部分にはしっかり投資すること)です。
一つ目の、“収支バランス”という点では、ややこしい指標ばかりで恐縮ですが、
経常収支比率は、99.9% (←前年度:103.2%) 【※ 100%以下が黒字】
基金投入額は、約10億円 (←前年度:約31億円) 【※ 少ないほどOK】
市債発行額は、約12億円 (←前年度:約25億円) 【※ 少ないほどOK】
と、すべての財政指標について、かなりの改善をすることができました。ややこしい専門用語ばかりで申し訳ありません・・・。
「経常収支比率」、すなわち、“経常的な収支バランス”は、6年ぶりに黒字化。
また、「基金投入額」、すなわち、“貯金を崩した額”は、昨年度の約1/3に抑制することができました。
そして、「市債発行額」、すなわち、“将来に向けた借金”も、昨年度の約1/2に抑制することができました。
要するに、前年度までと比べて、“子どもたちの世代にツケをまわさない予算”“収支バランスのとれた予算”に大きく近づくことはできました。
ただし、実際のところ、抜本的な解決には届いていない部分もあります。それは経常収支比率。前年度からは大幅に改善し、実に6年ぶりの黒字(100%以下)・・・ではあるのですが、実は、ここには不安定な収入(“臨時財政対策債”っていいます)がカウントされています。
この“不安定な収入”は、ここ数年間は「収入にカウントしてもいいよ」と制度上は認められており、実際にカウントされてきたものなのですが、実態は単なる“借金”。しかも存続は“国の気まぐれ次第”という制度で、来年あるかどうかわからないシロモノです。この、わけのわからない財源をカウントからハズしてみると、経常収支比率は104.8%(←前年度:108%)とハネあがり、依然として、箕面市の実態が支出オーバー(赤字)であることが鮮明になります。
この数値でも、前年度から3.2%の大幅改善はできていますが、解決には至っていません。正直な財政運営をしようと思えば、これまであまり赤裸々には説明されてこなかった、この数値を抜きに語ることはできません。
なお、昨年12月に示された「ゼロ試案」については、この赤裸々な方の数値での達成目標が示されています。そのH21目標は104.7%であり、今回0.1%届きませんでした。一方、基金投入額の抑制目標は、「ゼロ試案」の数値をクリアすることができています。
子どもたちにツケをまわさない、収支バランスのとれた予算に大きく近づくことはできましたが、たった1年では抜本的な解決にはとどいていません。引き続き、次年度に向けた課題が残っている状態です。
二つ目の、“メリとハリのついた予算案”という点では、単なる削減ばかりの緊縮予算ではなく、将来に向けて投資すべきところには重点的に投資することを心がけました。例えばですが、
・ 子どもの医療費の助成拡大(通院:小学校入学前まで、入院:中学校入学前まで、所得制限全廃)
・ 全中学校のすべての普通教室にエアコンを導入
・ 生徒指導の先生(箕面市の独自配置)を全中学校へ配置&小学校へ追加配置
・ 全中学校のコンピュータ教室のすべてのコンピュータの更新(とどろみの森学園は追加配備)
・ 箕面の緑・山なみ景観を守る新たな制度の検討開始
・ 公園や市の遊休地を地域で運営・活用する新たな仕組みの構築
・ 市内バス路線網の再整備&社会実験(H22)をめざした法定協議会のスタート
・ 北大阪急行線の延伸のための基金積立の再開(当初予算で15年ぶり)
・ 阪急牧落駅へのエレベータ設置(箕面線全駅のバリアフリー化を完了)
・ グリーンホール(市民会館)の耐震補強&エレベータ設置
など、特に、「子育て・教育」「緑・住みやすさ」「安心・安全」の3分野に重点化をして、削減・縮減どころか、むしろ、かなりの”攻め”の投資をする予算を組んでいます。当然のことですが、選挙で“マニフェスト”としてお約束したことを、さっさと実現することも、かなり意識しています。
この、かなりの“攻め”予算にもかかわらず、前述のように全体の財政指標を好転させることができたのは、
・ 職員人件費(4〜4.5%)の削減
・ 市議会による議員報酬5%削減、市長13%・副市長7%の給与削減
・ 市立病院の抜本的な経営改革の断行
・ 広範囲にわたる補助金の削減・縮小
など、各方面への影響を辞さずに、ある程度の思い切った削減も一緒に提案させていただいている結果です。関係の皆さまには、ぜひとも、ご理解をお願いする次第です。
なお、縮減・削減部分については、改革特命チーム・ゼロが提示した“ゼロ試案”と一致している部分もあります。でも、各方面での議論や、意見募集でいただいたご意見を踏まえて、異なる結論を出した部分もあります。
異なる結論の一例ですが、例えば、保育料の改定について今回は見送り、子どもが2人以上いるご家庭の負担軽減策(第2子以降に手厚い軽減措置)を盛り込む方向で改定案を検討するため、来年度の実施を目指すことにしました。また、障害者の事業所・作業所などへの補助金の削減について今回は見送り、持続的に支え続けることのできる仕組みへ再構築すべく、検討期間をとり、来年度の見直しを目指すことにしました。
これだけではありませんが、“ゼロ試案”と今回の予算編成にはズレがあります。あって当然。
もともと“ゼロ試案”は、議論のたたき台としてのシミュレーションの一つです。最も重要な目標は、トータルの収支バランスをとること(そうでなければ、そのツケが子どもたちの世代にまわるわけですから)であって、そのために「何を削減・縮減すべきか?」の選択肢はいろいろです。ただし、一部を見送った結果として、(前述のように)経常収支比率が目標に0.1%届かなかったり、といった課題は発生しています。
(※ ゼロ試案と予算案の“差”は、こちらの「平成21年度予算概要」の32ページ以降にリスト化してあります。)
今回の予算案は、H21段階で「何を削減・縮減すべきか?」の自分なりの答えとして“市長案”を示したものです。
目指していた目標、つまり、“財政バランス(収支バランス)の復元”と、単なる緊縮財政ではない“メリとハリのついた予算案”の両立という目標は、第一段階としては、ある程度、実現できている予算案だと考えています。市議会でどうご判断いただくことができるか、気合を入れて2〜3月議会の論戦に臨みたいと思います。
なお、今回の予算案が、“市長案”といいつつも、ひとえに職員ががんばってくれた結果だということは、どうしても申し添えておきたいと思います。財政担当の職員だけでなく、最終的に各部門でもかなり絞り込んだ形で予算編成に臨んでくれたことには、正直、けっこう驚きました。
おかげで、予算編成作業を通して、かなり的を絞った議論ができましたし、その結果がこの予算案。(もちろん“市長案”として、すべての責任をとるのは当然のこととしてですが)実際の作業経過として、とてもではありませんが自分一人では、到底、ここまでは仕上げらませんでした。心から感謝です。
平成19年度の箕面市の決算は致命的なショックでした。
箕面市の市制施行以来、初めて経常収支が赤字(初の経常収支比率100%超過)となった決算。そして、(経常経費だけでなく)臨時経費などを含めた“全体収支”でも、実質的に約2億円の赤字決算です(表面的には約13億円の黒字とされていましたが、基金を約15億円取崩して穴埋めしています)。
この非常事態だからこそ、以下の2つを両立することに、こだわり続けます。
・ 子どもたちの世代にツケをまわさない“財政バランス(収支バランス)の復元”
・ 削減一辺倒でなく将来への投資を断行する“メリとハリのついた予算案”
昨年8月の選挙のとき、街頭でこんなことを繰り返し述べてきました・・・「変えるべきは断固として変え、伸ばすべきは思い切って伸ばす」と。その信念は今でも変わりません。勝負の一つである平成21年度予算案です。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。
先日、我が家の目の前で“野焼き”・・・田舎感の良さを残した住宅都市“箕面”の風景です