
箕面市は2005年から「生徒指導の専任教員」を独自に配置しはじめました。その成果がこのグラフ。(正確に言うと、授業担当の教員を独自に追加配置することで「生徒指導の専任教員」を捻出する仕組みです。)
現在、一般的には、先生は「授業」を抱えながら「生徒指導」に臨むという体制になっています。これを、箕面市では「授業を受け持つことなく、ひたすら“生徒指導”にあたる教員」を配置して、家庭訪問や休み時間・放課後の対応、個別の生徒指導などを充実させています。
実は、市立小中学校の先生の人件費というのは、大阪府が負担する仕組みになっています。当然、大阪府は「生徒○○人に対して教員△人を配置」といったルールを定めて、これに基づいて市町村に先生を配置していきます。
箕面市では、この大阪府から配置される先生の数に加えて、箕面市単独で費用を追加負担することで、「生徒指導の専任教員」を配置する体制をとっています。これは箕面市オリジナルの仕組み。
スタートから数年たった今、あらためて経年変化を見てみると、この仕組みがいかに成果をあげているかがわかります。
箕面市の学力テストの平均点は、全国水準と同じか上回る結果となっています。これは、教育熱心なご家庭の努力といった要因ももちろんあると思いますが、それだけでなく、いかに学校の環境が充実しているか、落ち着いた学校(もっと言えば“荒れない学校”)であるかというベーシックな部分も、大きく寄与していることは間違いありません。
最近のニュースは、“反復学習”などの学力向上の“手法”に注目が集まることが多いです。でも、それ以前の基礎的な問題として、いかに落ち着いた学習環境をつくることができるか、もっと言えば、いかに“穏やかな学校”“荒れない学校”であり続けることができるか・・・この基盤がなければ、学力だの体力だのは、うわべの努力にしかなりえないと感じます。
余談になりますが、箕面市が2005年にこの仕組みをはじめた経緯、これがまた波乱でドラマチック(?)なものでした。
コトの起こりは当時の市長(前市長)が、「30人規模学級」のための予算を提案したところにはじまります。少人数学級は当時の流行でもありました。
ところが、実は、数年前から大阪府はすでに「35人以下でクラス編成する」(全国的には38人)というルールにしていました。これは、最大35人で学年をクラス割りしていくので、「1学年が70人だったら35人×2クラス」ですが、「1学年が71人だったら23〜24人×3クラス」となるルール。つまり、「35人」という数字の印象とはかなり違って、大阪府ルールだけで、すでに20人台のクラスがかなり増えていたのが実態でした。
このことに気づいた当時の市議会は、「政策としての耳ざわり(見栄え)はいいが、本当に実効性があるのか?」と、学校現場への調査に入ります。そこで把握したのは、「クラス編成がいかに少人数だとしても、問題行動を起こす生徒が1人でも発生したら、授業が成り立たなくなる」という現実。先生は、クラス全員への授業に対応しなければならないが、問題の生徒にも張り付かなければならない・・・。たしかにそうですよね。
そこで、箕面市が独自にやるなら、ともすると片手間になりかねない「生徒指導」に専念できる体制をつくるために税金を費やす方が、政策効果が大きい・・・との結論に至り、市議会がコレを逆提案。予算を議会修正して可決し、2005年に箕面市オリジナルの仕組みがスタートしたのでした。
この当時の市議会の判断は、まさしく大正解だったと思います。その成果が冒頭の実績値のグラフ。
毎年、各部門からたくさんの予算要求が出てきますが、今年の予算編成のなかで最も説得力があったのが、このグラフでした。・・・したがって、今年度予算(約4000万円/年)では中学校の全校配置への拡大に踏み切りました(昨年度までは小・中学校の一部配置)。
初めてこのグラフを見たときから、「これだけ実績があがってるなら、もっと広く知ってもらうべき。箕面市だけでなく、たくさんの地域で取り組むべき。」と感じていました。
今般、箕面市教育委員会が報道発表したのは、その意図の一環。さらに、大阪府や大阪府議会へもこの仕組みの有用性を強く訴えはじめているところです。・・・箕面市オリジナルのこの仕組み、もっと広がっていくように声をあげていこうと思っています。
いよいよ紅葉が山を彩りはじめました。この週末も滝道は大にぎわいです。

