ホットな話題でもあり、ときどき尋ねられるテーマなので書いておきます。ちょっと長いですが・・・。
僕は、橋下知事の「大阪維新の会」には(もちろん)入りませんが(維新の会だけでなく、どこの政党にも入りませんが)、大阪府・大阪市を統合する「大阪“都”構想」には絶対的に大賛成、これは必ずやるべしという立場でいます。
一応、昨日の大阪市議選、大阪維新の会の“初陣”が圧勝を飾ったから勝ち馬に乗るとかではなく、このことは以前から表明してます・・・念のため(笑)。
東京に長く住んでいた僕にとって、たった1人の知事のリーダーシップにより都心エリア(23区)の大きなまちづくりが強く展開されるという構図は自然のこと。しかも、住民の暮らしに密着した行政分野は公選制の区長・区議会が担当するから、個々の地域特性にも民意が反映する仕組み。
その感覚からすると、大阪都心エリアのビジョンを描こうとするリーダーが2人いて(大阪府知事・大阪市長)、しかもその2人が対等に言い争ってモノゴトが進まない図というのは違和感ありありなのです。
掛け合い漫才(笑)のように言い争う知事&市長。見ていて(エンターテイメントとして)おもしろいですが、行政体としては壮大なロスとしか思えず、大阪に住むようになってから、いつも「なんじゃこりゃ」と感じてばかりでした。
制度上「政令指定都市」というカテゴリーに入る大阪市は、都道府県レベルの仕事のほとんどを独自に扱うことができるようになっており、多くの分野で大阪府の権限は及びません。その意味で、大阪府と同格と捉えてよいと思います。
その結果、大阪府は“大阪市を除いたエリア”だけを相手に仕事をする。大阪市は大阪市だけのことを考えて仕事をする。このため、都心部から緩やかに広がる「大阪」としての大きなまちづくりの視点は欠落する・・・今はそんな構造。
大阪府・大阪市の水道事業の統合が議論されたのは記憶に新しいですが、最終的な方向性が、当面は「大阪市」と「大阪市を除く市町村の連合体」の2つの水道事業でいくというモノワカレに終わったのは、一つの象徴的な事例。
ただでさえ都道府県のなかでも面積の狭い大阪府でありながら、「周囲との協調をまったく考えない大阪市」と「大阪市に手出しできない大阪府」。この両者が互いに遠慮&ケンカしするだけで並存し続ける大阪に、僕は、大都市圏としての明るい未来があるとは、正直、感じられません。
そこでモデルとなるのが東京23区の仕組み。
大阪維新の会も提唱する「大阪“都”構想」とは何か。
どちらも都心部に多くの「区」を抱える東京と大阪。行政に携わる仕事をしていなければ相違に気づかないかもしれませんが、この両者、実はまったく違う制度です。

さらに「区」の性質ですが、大阪市の「区」は「大阪市役所の出先機関」(=区長は大阪市職員)、東京都の「区」は「一つ一つが独立の自治体」(=公選制の区長・区議会を擁する自治体)。・・・ここも違う。民意が身近な区政に反映するか否かが異なります。
東京の「区」は、基本的には市町村と変わりない自治体。ただし一部の権限が東京都に吸い上げられている、いわば「プチ市町村」といった存在です。
おそらく、都心エリアは東京都が強い権限を持つ代わりに、生活に密着した身近な行政は民意を反映する自治体「区」が担当し、地域特性を活かするという考え方。それが東京都モデル。
・・・これに対して、大阪の「区」は自治体でなく、実は、大阪市の行政エリアの“区切り”にすぎません。
僕は、人口集積地でありつつ面積の狭い狭い大阪には、府・市2つの権限が張り合うのでなく、広域的な視点をもった1つの強い都市政策が必要と感じます。そのためには、東京都モデルの方が優れている。だから「大阪“都”構想」に賛成します。
(ただ、自治体呼称としてのネーミングはやはり「大阪府」が好みですが。)
ただし、どこまでのエリアを大阪都が「区」として再編すべきか。これについては、僕はもうちょっと慎重に考えた方がいいと思っています。「大阪市」が都心であることは間違いないですが、それを超えて、どこまで大阪都がグリップすべきエリアか。
大阪維新の会の素案では、かなり広いエリアが「区」に再編されていますが、これは一つの案。各地域にはそれぞれ濃いアイデンティティがあるので、もうちょっと考えていいような気がしてます。
・・・個人的には、まずは大阪市を対象に東京都モデルを導入して、周辺については次のステップで考えてもいいのでは?と思ったり。・・・今日のブログで「大阪市」のことしか書かず、例えば、同じく政令指定都市の「堺市」について触れていないのは、実はそんな感想があるからです。
さて、ともかく「大阪府・大阪市の統合」は、橋下知事が初めて提唱したのでなく、実は、歴代大阪府知事が言い続けてきたことであり、かつ、実現してこなかった難易度の高いテーマであることも、忘れてはなりません。
だから諦める・・・というのでなく、諦めず理想は追求すべき。その第一歩として今回の大阪市議選を、「大阪維新の会」が“ONE大阪”を掲げて勝利したことに(前途多難なイバラの道であることを承知の上で)素直にエールを送りたいと思います。
【一応、今日の記事はここまで。ここから先は蛇足・・・。】
選挙期間中だったので書くのを控えていましたが、大阪市議選でいくつかの陣営が「橋下知事は福島区を解体する」と主張していましたが、これはハッキリいって誤り。
福島区には住民が選ぶ区長も区議会も存在しておらず、いわば大阪市役所の出張所が存在するだけで、福島区には独立した「自治」と呼べる機能はもともとありません。・・・したがって、そもそも解体の対象が存在しない。
大阪都がモデルとする東京都23区制が導入されるならば、そこで初めて住民が「区長」「区議会」を選ぶことになるので、むしろ解体ではなく「福島区の自治の“創造”」くらいに呼んだ方がいいくらいかもしれません。
それと、大阪市が大阪市のことしか考えないのは、箕面市長・市議会が箕面市のことしか考えないのと同じで、そこにいる人たち(市長・議員・職員)の役割としては当然だと思います。だから平松市長が悪いとか、大阪市議会・大阪市行政の人たちが悪いとか、そういうことではありません。
見直すべきは「仕組み(制度)」です。そこを誤解しない冷静な議論を期待します。
あと、知事が大阪市議選に介入するのはどうか?といった声もありますが、僕は、制度上は大阪府が大阪市に手を出すことができない以上、制度そのものを左右する「政治」の世界で手を出そうとするその手法は正しいと感じます。・・・まあ橋下知事らしい(笑)とは思いますが。
なお、府・市統合後の知事(大阪都知事?)は、橋下知事でなくてもいい。平松市長が就任されてもいいと思いますし、そこは選挙の民意で決まればOK。重要なのは1人のリーダーを中心に大阪全体のことを考えていく「仕組み」だと思っています。
以上、蛇足でした。
【・・・と思ったら、平松市長とのキャッチボール?!】
・平松邦夫大阪市長ブログ(6月17日) : 大阪"都”構想への思い…箕面市長倉田哲郎様
・倉田哲郎箕面市長ブログ(6月18日) : 続・『大阪“都”構想』をどう思う?〜大阪市長平松邦夫さま