ん?“特定調停”って何?・・・という人が(僕もそうでしたが)ほとんどじゃないかと思います。(極めてアバウトに言えばですが)借金の返済がしんどくなった会社が、裁判所のテーブルで、債権者と話し合う仕組みとのこと。
それと「箕面都市開発(株)」という会社のことも、ご存じない方がほとんどじゃないかと思います。僕も市で仕事してなければ、果たして知っていたかどうか。
箕面都市開発(株)は、約30年前の昭和53年に、箕面駅前の再開発事業で「箕面駅前サンプラザ」が建設された際、このビルの管理会社として設立された会社です。設立以来、箕面市は約68%を出資する最大株主。
加えて、約6年前の平成16年には、箕面都市開発(株)が箕面市から約11億円の借り入れをしています。箕面市は同社の出資者であるだけでなく最大の債権者でもある。・・・このため、市として特定調停に臨んでいくことになります。
さて、今回、箕面都市開発(株)が特定調停を申し立てた・・・すなわち、経営にいきづまった“直接の引き金”は、箕面駅前の市営駐車場の管理者公募に落選(昨年12月)して、大きな収入源を失ったこと。・・・この“落選”については、正直、僕には「会社の努力不足」としか言いようがありません。
「市営駐車場を受注させていればよかったのでは?」などと言う人が(稀に)いますが、市の出資会社だからって、その会社を救うために公募を歪めて仕事を発注するなんてこと、僕にしてみればアリエナイ。・・・あとで応募資料も見ましたが、まあ、申し訳ないですが、ハッキリ言って「市の3セクだから受注させてもらえる」とかナメてたんじゃ?と感じてしまうレベルのものでした。
完全に努力不足ですし、この“ナメた姿勢”が経営悪化を加速させてきたことも間違いない。
・・・では、仮に、市営駐車場を受注できていたら、この会社に問題がなかったか。
僕はそうは思いません。おそらく遅かれ早かれ何かのキッカケで会社が抱えていた「問題」は火を噴いただろうと考えます。その「問題」とは何か?・・・それは、この会社が極めて歪んだ財務構造をしていることです。
実は、問題の原因は15年前。平成7年に由来します。
平成7年に、なぜかこの会社は箕面駅近くの1500平米の土地を購入しています。会社は、この土地購入費用として金融機関から約12億円を借り入れましたが、その後、地価下落により大幅な損失を抱え続ける結果となりました。まさしく絵に描いたような不良債権。これが今も続く「財務構造の歪み」であり諸悪の根源。
正直、なんで買ったのか意味わかりません。・・・この件、当時の新聞が「箕面の三セク会社・『年900万円損』の駐車場購入」と報道までしてるんですが、記事を見るかぎり、市は会社のせいにし、会社は市のせいにしてるばかりで、真相がよくわからない。
書類もほとんど残っていないうえ、意思決定に関わったとおぼしき人たちは既に他界しており、調べても手詰まり。平成7年といえば、時期的にはバブルもとっくに崩壊し、地価が下落し続ける真っ只中。この時期に、会社の規模からすれば過剰としか感じられない買い物がなぜされたのか。当時の経緯は釈然としないことだらけなのに追いかけようがなく、個人的にはイライラ・・・。
その後、不良債権処理を加速させる金融機関の金利上げ圧力にさらされて、会社は市からの融資に借換えをします(平成16年)。ここから市と会社の債権・債務関係ができあがりますが、“借換え”に「財務構造の歪み」を解消する効果まではないので、H7以来の爆弾が消えることはありません。
そして昨年の市営駐車場の失注がまさしく“引き金”となって爆弾が表面化し、今回の特定調停を迎えた・・・というのがこれまでの経過。
・・・さて、どうするか。
箕面都市開発(株)は、駐車場などの施設管理だけをしているわけでなく、実は、いくつかの地域(例:萱野中央)で地権者を組織化して商業核を誘致&マネジメントするなど、いわば3セクならではのまっとうな(?)仕事も複数抱えています。・・・まっっったく表には見えにくいですが。
平成16年の市による借換えも、こうした仕事への影響を悩んでの政策判断&議会経過。
だからと言って、今回、安直に存続させるつもりもありません。僕は箕面都市開発(株)に特別な思い入れがあるわけでもないですし。・・・一方で、安直に「つぶすか」と問われても、税金である出資金・貸付金の行方や、どこかかかるかもしれない迷惑も含めて、ガタガタするだろうことも事実。
正直、今この瞬間にはどうすべきか判断がついてません。裁判所に持ち込まれた以上、すべては特定調停の場で、いったい箕面市が何を求められるのか?によって、利益衡量して判断していくしかないと思っています。
ただし、どういう結論に至るにせよ、今後、同じ悩みを繰り返すなど真っ平ごめんです。平成7年からの積年の課題。僕が市長をさせていただいているこの時期に火を噴いたことをむしろ幸いとして、ズルズル引っ張ることなく、ここでキッチリ決着をつける、ということだけは心に決めてます。
なお、今回の件、僕は問題の所在が主に3つに集約されると考えています。
一つには、諸悪の根源となった平成7年の謎の土地購入。
一つには、会社の経営責任、特に市の融資(平成16年)以降のアマい経営姿勢。
一つには、そのアマい経営姿勢を許した近年の箕面市の指導・監督不足。
ちなみに箕面市の担当ラインは一新して専属体制に移行。・・・ひとまず、すぐできることはしてますが、ここからは裁判所での特定調停。
とにかく早期に決着すること、抜本的に課題を解消すること、この覚悟で特定調停の手続に臨むつもりです。
箕面都市開発(株)の起源となった再開発直前の箕面駅前(S52・会社設立の前年)
余談ですが会社のことを調べてる最中に見つけた一枚。現在の箕面駅前への変貌ぶりを思うと、当時としてはいかに大変な事業だったかが想起されます。