9月の議会は、前年度「決算」の審査も加わるため、普段の定例市議会(1ヶ月くらい)より長い10月下旬までになります。もちろん決算だけじゃなく、防災対策予算とかいろいろと議案を提出してるんですが、そのなかに、小野原エリアに図書館を新設するための予算があります。
今回のこの予算案の提出は、小野原エリアに図書館を新設することを、初めて正式に提案するアクションであり、予算が可決されればすなわち小野原に図書館ができることを意味します。
世の中全体の流れからすれば小さな街の小さな出来事かもしれませんが、僕の仕事的には、ここまでくるのは、なんというか・・・ドラマチック(?)な展開でした。記録を兼ねて書きとどめておきます。

さて、もともと小野原・・・というよりも正確には「国道171号線より南側で、新御堂筋より東側」のエリア、つまり「箕面市の地図の右下くらい」のエリアは、学校・コミュニティセンターを除くと公共施設の空白地域でした。このため、小野原エリアでは、以前から公共施設がほしいという声がありました。中でも特に「図書館機能」が。
これは市長に就任させていただくよりも遥か昔、僕がまだ箕面市役所の職員として働いていた2003年頃にはすでに聞こえていたのを記憶しています。そして、当時、行政改革も担当していた僕の正直な印象は「図書館を増やすなんて狂気の沙汰」という感じでした。
なぜなら箕面市にはすでに6つの図書館があります。人口13万人規模で6館あるというのは一般的な市町村からすれば明らかに突出。例えば、お隣の池田市(10万人)で2館。摂津市(8万人)も2館。人口が2倍の茨木市(27万人)でも5館。人口が3倍の豊中市・吹田市・高槻市でもそれぞれ9館・6館・5館。
人口を図書館の数で割ってみると(1館あたりの人口)、北摂では「約4万人(摂津市)〜約7万人(高槻市)で1館」というのが標準的ですが、箕面市はその半分以下の「約2万人で1館」という計算になります。これは極めて特異。なお、2005年に箕面市が監査法人トーマツに委託した財政分析でも、そのことが指摘されています。
どこに住んでも近くに図書館がある・・・たしかにこれは「箕面市のウリ」であることに間違いありません。でも、それを支える財政は火の車、数字は非情なものです。2003年当時ですら財政見通しの厳しさは明白でしたし、その後、実際に2008年にかけて箕面市の財政状況は悪化の一途をたどっていきました。
一方で、2006年12月には、小野原周辺の自治会や自治連合会による「小野原のまちづくりを考える協議会」から提言書が出されており、そこでは地域に必要な公共施設として「未来型図書館」(蔵書を極力少なくし新刊書や雑誌等を中心とした構成/一般図書などはパソコン等で予約・取り寄せ・貸し出し)という姿が示されています。
こうした背景を経ながら、2010年頃に小野原西エリアの市街地整備が完了し、まちびらきとなりました。以来、多くの皆さんが目にされているとおり、小野原エリアは急成長を続けています。
そして、もともと小野原西の土地区画整理事業のなかでは「公共施設用地」を捻出することが予定されていました。それが今の「ほっともっと」「ミルフィーユ」の裏側あたりにある空間(↓赤い矢印)です。

航空写真の左端に見えてるのが千里国際学園・・・だいたい位置関係わかりますか?

もとより楽な財政状況じゃありません・・・というより箕面市始まって以来初めて決算で経常赤字に転落したという、いわばズタズタだった2008年頃です。そんななかで財源の捻出から考えなきゃならない。そもそもやれるかどうかすらわからない。そんなスタートでした。
着目したのは、課題となってる施設は小野原だけではないということ。箕面市内の複数施設の課題整理、土地の売却、施設整備に充てられる国の補助金などをトータルで考えて、全体として箕面市の財政負担を増やさずに答えを求めようと考えました。そうやって悩んだ末にまとめあげたのが「施設再編プロジェクト(たたき台)」(2010年9月)でした。
これは、新設が必要な施設、老朽化などで更新が必要な施設など、いくつかの施設機能の整理・統合をしながら、空いた土地を売却して、国の補助金とあわせて財源を捻出することで、市として新たな持ち出しなく施設整備を進めていくというプラン・・・いわばパズルのように。
公共施設の空白エリアだった小野原にも、西部・東部両方に施設を整備する目途(=財源)をつけることができたのは、このプランをまとめることができたからでした。
ただし、ここで市として小野原(西)に提案したのは「多文化交流センター」であり、図書館ではありません。図書機能としては、施設の一角に小さな「図書コーナー」を置くというものでした。
・・・というのは、図書館はとっても運営コストのかかる施設なのです。今は6館で約3.9億円の運営経費が毎年かかっています。
「施設再編プロジェクト」で建設コスト(初期費用)まではなんとか捻出したものの、箕面市の財政構造の特性上「運営経費」のように毎年かかるコストの増は致命的というのが現実。提案した「図書コーナー」はコンパクトながらも前述の「小野原のまちづくりを考える協議会」の提言書(2006年12月)を踏まえたものであり、市としては精一杯というのが本音のところでした。
ところが、小野原の地域説明会で、この案は大反対にあいます。図書館を望む意見が大勢を占めたためです。それほど、地域として想いが強かったということ。
それでも担当職員は市の事情を説明し続けました。・・・が、ご理解を得ることはできず、この件はいわば「ヤマにあがった」状態になりました。それが2010年10月頃のこと。
僕は、そこまで地域の想いが切実ならば、その想いに誠実でありたいと思いました。
その一方で、小野原だけでなく全市民からお預かりした税金ですから、不用意な税支出で財政バランスを崩すことも全市民に対して不誠実なこと。それも絶対にしたくないのが僕のスタンスです。
・・・この両者を解決できる唯一の道、その可能性は少しは頭にあったのですが、改めてそれを徹底的に探ろうと考えました。同時に、それでも無理ならハッキリ「図書館は無理です」と言う覚悟でもありました。
(長いので次回に続く)