そして、10年以上にわたり図書館運営の見直しを阻んできた要因は「(1)図書館に手をつけると痛い目にあいそう」「(2)図書館業務のブラックボックス化」の2点。
(1)の解決はシンプルです。僕が覚悟を決めて腹をくくって、ブレないこと。
したがって、ここからは(2)が主戦場。この先は本当に職員“大活躍”の領域でした。
どんな議論をするにせよ、口でああだこうだ論評してるだけでは前に進みません。現実を前に進めるためには、なにか具体的な“たたき台”や“モデル”を提示しなければ始まらない。
小野原の公共施設が「ヤマにあがった」2010年10月。改めて、僕は何人かの職員と一緒に全図書館をウロウロ歩きまわったうえで「こうしたらいいんじゃないの?」という仮説を立てて、ひとまず職員チームに“たたき台”をつくるよう検討指示をしました。
発想のスタートは、箕面市の図書館のいくつかは比較的“小ぶり”であるということ。例えば、都心部の「中央図書館」と呼ばれるような大きな施設の運営と、同じ運営(業務の分担や人員配置)を、仮に規模の大小にかかわらずやっているとしたら、小さい図書館であればあるほど非効率になる(=業務は少なくても人員を配置しなければならないから)のは当然。・・・箕面市の図書館運営が過去にほとんど見直されたことがないことを考えると、このあたりは怪しいんじゃないか?というのが一つの仮説。
また、同様の発想からくるのですが、箕面市の特徴である「図書館の数の多さ」を考えると、「どこでやってもいい仕事をそれぞれバラバラにこなしてないか?」「集約化できるものがあるのではないか?」というのも一つの仮説。
ざっくり言えば、箕面市の図書館は「それぞれ独立・完結してて、バラバラに動いているんじゃないか?」「全体で一つの図書館として、互いに仕事を融通しあいながら動いた方が効率的・効果的なのでは?」という仮説を立てて、職員チームは検討に入りました。
ここからの職員チームは本当に獅子奮迅でした。
一部は図書館の職員も参加してましたが、大半は図書館経験のない職員が多かったので、まずは図書館業務の解明からはじめなきゃいけません。なかには、休日にストップウォッチを持って図書館を見に行き、丸一日、カウンターや人の動きを計測しながら業務量を紐解いていったりしてくれた職員も。
・・・こうした動きには、過去の箕面市の事務改善活動の経験が活きています。例えば、箕面市では過去にコクヨビジネスサービス(株)の協力を得て、分単位で業務を計測・解析して再構築する見直し作業もしたことがあるのですが、そうした積み上げ手法などの経験が、今回の図書館運営の見直しの随所に活かされました。
それと、「図書館運営の見直し」は、決して削減だけの話ではありません。
今の時代にそぐわない非効率な部分を改め、そこから捻出されるリソースを強化すべき部分に投入する。これこそ「見直し」です。・・・その一つが(できれば)図書館の新設でもあるわけですが、他にももっともっとあります。
例えば、職員チームの検討作業のなかででてきた話。箕面市の図書館全体の予算(3.9億円)を見渡してみると、その約70%(2.7億円)が人件費なのに対して、実は、書籍の購入に充てられている費用は7%余り(0.3億円)に過ぎないのです。

業務の効率化によって財源が捻出されるなら、むしろ今は絞られている「本」に財源を投入すべきでは?・・・職員チームの検討作業からは「毎年の書籍購入費を2倍に」という提案が出てきました。この他にも、「インターネット接続環境の整備」として「公衆無線LANの整備」「iPad・ネットブックなどの館内貸出」といった項目もあがってきました。
もちろん逼迫する箕面市財政に貢献してもらうことは必要ですが、すべての削減努力を図書館から召し上げるのは本意ではありません。まさしく今の時代にあった「図書館運営の見直し」を進めてくれた職員チームでした。
その検討結果が「箕面市図書館8館構想(たたき台)」。
まとまったのは2011年3月のことでした。

例えば、この検討結果(8館構想)がまとまる前の2010年12月の箕面市議会(文教常任委員会)。
単に「小野原が図書館を求めてるんだから図書館を増やせ」という安直な主張を繰り返す(一部の)議員がいましたが、ある程度の見通しをつかめない状態では無責任なことは言えないので、こちらとしては「“今のままの図書館運営を前提にするなら”増設は不可能」「悩んでます」くらいの答えが限界。
そうすると、(当たり前ですけど)なんか後ろ向きな姿勢に受け取られて、余計に「市長はわかってない」とかなるわけです。・・・いや、わかってないのはあんたの方だ。議員なんだから、「今のままじゃ無理」=「今のままじゃなければ可能性がある」って言葉のウラくらい読み取れよ!・・・などと口にできるわけもなく。
前回・前々回も書いてきたとおり、かなりの覚悟&決意で実現可能性を探ってたわけですから、なおさら歯がゆくフラストレーション高かったです。・・・「今に見てろよ」って感じ。
その一方で、検討結果(8館構想)がまとまる前の時期でも、起こせるアクションは起こしていました。
例えば、検討作業のなかでは、業務を大幅に効率化するために欠かせないものとして、かなり早い段階から「ICタグの導入」が必須だとの認識に至っていました(図書館の本に貼ってある「バーコード」に替わる、新しい管理システムだと思っていただければ結構です。)。・・・実は、「ICタグの導入」が検討されたのは今回が初めてでなく、かなり昔から何度か議論されたことがありました。したがって、今回の図書館の見直しがどんな結末になろうとも「導入してムダになることはない」というのはわかっていました。

「検討作業」というのは、単に書類をまとめる作業ではなく、市役所内の多数の職員が参加した(巻き込まれた?)議論そのものだったので、途中でもアンテナはってましたし、そんなアクションができたのでした。・・・なお、この交付金、結果として予想以上の額が交付されたので、非常にありがたかったです。
さて、職員チームによる「箕面市図書館8館構想(たたき台)」が2011年3月にまとまったわけですが、相変わらず「図書館に手をつけると痛い目にあいそう」というタブー意識は強く、この時点でも担当部が「こんな大胆な見直し案を公表して大丈夫だろうか?」と迷うシーンなどもありました。
こんなときは僕の役割。・・・「たぶんもめるでしょうけど、気にせずどんどんもめてください。」「メリットも大きいプラン。理解してくれる人は絶対にいる。」と呪文のように繰り返して、公表と議論を促していきました。
そうしたら・・・やっぱりもめました。
(長いので続く・・・狼少年のようですが次こそホントに最終回!)