昨晩の北摂市長会(箕面・豊中・池田・吹田・高槻・茨木・摂津の市長会)は、出席予定だった橋下知事が公務自粛(お子さんのインフルエンザのため)で欠席。
もともと「伊丹廃港の話をしに来る」とのことで、みんな身構えていたのが欠席になったので、「なーんだ」と思っていたら、急遽、副知事がメッセンジャーとして3空港問題についての“橋下ペーパー”(←僕が勝手にそう呼んでるだけです)持参で登場。記者さんたちにも公表されたので、今朝、何紙かに載っていました。
一部の新聞は「仰天プラン」「大胆プラン」とか書いていましたが、これまで十分すぎるほど橋下知事が「伊丹廃港」と吼えまくっていたので、あんまり仰天してないです。
むしろ、今まで資料としてまとまったものがなく、発言だけが先行して断片的にしかわからなかった橋下知事のイメージが、初めて整理されて示されたので、それはよかったんじゃないかなと思ってます。やっと冷静に議論できる材料がでてきた感じ。
昨日、配布された“橋下ペーパー”は、「大阪・関西における地域経営戦略プロジェクト」という大きな政策集の空港関連の一部抜粋版で、5枚もののプレゼン資料。
以前、関西の3空港問題について僕も
ブログで雑感を書いたり、
Twitterでつぶやいたりしましたが、そのときの予測どおり、“橋下ペーパー”は、やはり時系列は「中央リニア・関空リニアの整備」→「伊丹空港廃止」という考え。ちなみに、その前段には
僕の持論である「関空・伊丹の経営一体化」も盛り込まれていました(・・・持論といっても、誰でも思いつく案ですけどね)。
“橋下ペーパー”から大阪国際空港だけのポイントを書き抜けば、
2009年 国際空港政策・航空政策の再構築 ・関空をわが国のハブ空港に位置づけ
2011年 関空・伊丹の一体経営 ・伊丹の収益を関空に投入し、関空の財政構造を改革
・国際線を含め伊丹を最大限有効に活用
・関空リニア整備資金の蓄積
2035年 リニア中央新幹線・関空リニア整備と同時に伊丹空港廃港 ・伊丹空港跡地まちづくりスタート
「新生・関空」の実現 ・国内線の再編集約
・アクセスの劇的改善
なお、副知事の説明によると、“橋下ペーパー”は大阪府として機関決定したものではなく、政治家“橋下徹”としての私案(試案?)とのこと。
個人的には、「関空・伊丹の一体経営」「中央リニア整備完了」「関空リニア整備完了」など、すべての状況が整うならば一つのプランとして理解はできます。(その状況が整うなら北大阪から関空まで10分で行けますしね。)
でも、このプランの実現には、少なくとも20年以上、普通に考えれば30年以上、ヘタすると50年以上かかります。・・・とすると、政治家“橋下徹”個人が今一人で主張しているだけでは、単なる“突飛なアイデア”に過ぎず、実現可能性は見えません。
国や大阪府などが「組織」として意思決定して、継続的に保持し続けるプランにまで持っていけるかどうか・・・もしかすると政治家「橋下徹」の腕の見せどころ・・・なのかもしれませんが、そうでもならない限りは、箕面市を背負う立場からは、賛同できる次元のものではありません。
加えて、
僕も主張している「関空・伊丹の一体経営」が仮に順調にいった場合、順調でもなお敢えて伊丹空港を廃止する必要があるのか・・・そこが橋下ペーパーの主張からはよくわかりません。
橋下ペーパーは、24時間稼動可能な2つの海上空港(関空・神戸)に「選択と集中」すべきと主張します。諸外国の国際空港と比較して、鉄道アクセスに劣る関空のために、関空リニアを整備すべしと主張します。
でも、もともと梅田まで20分という鉄道アクセスに優れた伊丹空港を捨てる理由がほとんど述べられていません。唯一あるのは「中央リニア(東京・大阪)」の開通により伊丹空港の存在意義が低下する(伊丹空港の4割を占める羽田便のニーズが消滅するから)という理屈。
でも、これは「伊丹空港を国内線に限定する」という前提があってのこと。・・・既存の枠組みに囚われない発想を持ち味とする橋下知事が、なぜここだけ既存ルールに縛られるのか?国内線・国際線を問わずキャパいっぱいまで伊丹空港を活用すればいいはずなのに。梅田まで20分でアクセスできる伊丹空港には、路線制限さえしなければ、いくらでも離着陸ニーズはあるはずです。
今の伊丹空港は、本来、自由に羽ばたける空の翼を、陸の事情で縛りつけている状態ですから。
線路をひかなきゃ結べない鉄道と違って、自由に路線を描けるのが空港。・・・国内外を問わずキャパいっぱいまで伊丹空港を活用して、溢れる分を関空と神戸で吸収する。また、夜間の方が輸送コストも安く有利な物流を24時間の関空・神戸で一手に引き受け、昼間がメインの人の流れは伊丹空港で引き受ける。3空港・5本の滑走路を一体として関西全域でフル活用し、ニーズに応じて離着陸できる場所を選択しうるようにする。これがいわば“3空港活用論”。
この“3空港活用論”よりも“2空港体制”の方が優れている、しかも膨大なコストをかけて関空リニアを整備してもお釣りが来るくらい“2空港体制”の方が優れている。・・・少なくとも関空リニアの巨額投資を実現するだけでも、このことがハッキリ証明されないと前には進まないと感じますが、まだまだ論拠は不十分。この点をかなり補強しないと、たくさんの人を巻き込む社会的・組織的なプランとして成立していかない・・・というのが今の僕の感想(評論?)です。
まあ、“3空港活用論”にしても、正直、積極的に「3空港でなければならない」という理屈は立たなくて、「既存ストックを活用する」(=3つあるから無駄にしない)というレベルであることも事実なんですが。・・・それでも、新たな投資に踏み出すためには、既存ストック活用を超える、明確なメリットを見せることがどうしても必要ですよね。そこがちょっと見えないのです。
唯一ありうるとすれば、3空港をコスト的に維持し続けられるか?かな・・・。ただ、関空リニアという新しいインフラの維持コストも考えると、それも、うーん。
・・・書き綴っていると、今の段階ではどうしても「私案」に対する「個人的な評論」になってしまいます。ちょっとズルい気もする。
いずれにせよ、今回の北摂市長会はペーパーのみで、橋下知事が直に語ったわけではありません。したがって今はここまでの感想。いろんな機会で直にやり取りをしていかないと、深まっていかないんだろうとは思っています。
さて、長くなってしまいましたが、最後に一点だけ。
“橋下ペーパー”の示す空港プランについて「30年先、50年先の話なら、どうでもいいよ」と反応する政治家の方もいます。でも、それはないだろうって僕は思います。僕が35歳だからってことではありません。50年先のことだろうが100年先のことだろうが、将来ビジョンは持つべき、または、持とうと努力すべき。
対症療法の繰り返しでは社会はちぐはぐになります。ビジョン・見通し・予測・・・なんと呼んでもいいですが、未来を真剣に議論しなくなったら政治は終わり。突飛だろうがなんだろうが、ビジョンが出てきたなら真剣に受け止めて考えるべきと僕は思います。
そんなことを感じながら、関西3空港問題の議論にも参戦していくつもりです。